福岡地域戦略推進協議会(以下FDC)と国連ハビタット福岡本部(以下ハビタット)は2023年3月16日、国連ハビタットFDC連携サロン「国際人材を惹きつける魅力的な都市とは」全3回シリーズ第3弾を開催いたしました。
第1回のテーマは「アート」、第2回のテーマは「食」としてサロンを開催し、国外事例を参考にしながら、多様な人材が活躍するために必要な都市の在り方について芸術や食文化に関わる方と共に考えてきました。
第3回は、その総括として広く「文化」をテーマに置き、文化が育つ創造的な街とは何なのか、福岡の地域を一例に挙げて参加者と一緒に考えました。
プログラム
・開会挨拶
・団体紹介(国連ハビタット/FDC)
・これまでのサロンの振り返り
・パネルトーク
「文化」×「都市デザイン」をテーマに考える、国際人材が集まる魅力的な街とは?
・ネットワーキング
団体紹介 国連ハビタット 文化を守り、継承するまちづくり
国連ハビタット 星野様より、国連ハビタットの団体紹介として、災害や紛争から復興するまちづくりを支援する活動についてご紹介をいただきました。
- 復興の現場では国連ハビタットが契約するコントラクターやゼネコン、建設会社が復興するのではなく、住民の皆さんご自身で復興していただく。
- 自分達の大切なものをまちの真ん中に作り、それを中心にまちづくりを計画していく場合が多い。
- 何を中心に置くかは、国、文化によって異なる。
- 公園・広場・学校・モスク・寺院など。大人も子供もお年寄りも集まってくる。まちの福祉システムが出来上がっていく。
- 人、祭りが戻り、踊り、音楽、楽器作り、小売り、店が戻ってくる。文化が戻ってくる。文化の力によって災害や戦争からの復興を推進していくというまちづくりはどこででも行われる。
- 基本計画は国連ハビタットの職員が行うが、その土地の文化を反映した様々な素材・材料、色等を採用することで、使う人の満足度が高く使い勝手の良いものができる。大切にされる。
- マイムナー・モハメド・シャリフ 国連ハビタット事務局長 (国連事務次長)の言葉紹介『文化・イノベーション・都市は共依存』 三位一体である。
パネルトーク
「文化」×「都市デザイン」をテーマに考える、国際人材が集まる魅力的な街とは?
福岡は、70年代~80年代役所が市民を巻き込みながら、福岡市の未来について議論が行われていました。
かつては、『もっと福岡のまちが魅力的になるにはどんなストリートデザインが必要なのか』といったことについて、建築家やランドスケープデザイナー等が自主的に新聞紙上などで発表していたという文化的背景を受け、会場に集まった参加者全員で議論に参加するという形でパネルトークを展開しました。
トークの要旨は以下の通りです。
- 福岡のまちづくりを誰がやってたか、どんな場があったのかあまり知らなかったが、かつては勝手に議論していたらしい。
きっかけの一つは地下鉄ができた時。路面電車の市電がなくなるときに歩道、車道の状況や沿線上のデザインなど全体を考えたほうがいいのでは、といったことを勝手に集まった人たちが計画をしていた。 - 福岡の人口増に合わせて一人一人の役割が薄くなっているのかもしれないが、行政だけがやるものではなく、ひとりひとりがバックグラウンド、歴史をもっているのかということ考えて投影するようにしないと、世界中どこも均質化していく。
- 福岡の文化の特徴として、歴史的にもモノや人の出入りや通過が活発だったことから、変化を厭わない風通しの良い気風を挙げることができる。来るもの拒まずな進取の精神が、福岡の最大の特徴。
- 福銀ビル、ネクサスワールド、そういったものが文化だったのではないか。
- 福岡は九州という背景があって発展しているので、九州に対し恩返しをしなければならない、という思いがある。
- 九州各県の素晴らしいものを福岡が応援し、今後インバウンドが来たら九州の食べるべきもの行くべきところがだいたいわかる、というような、福岡が心臓になって九州に血液をおくりだしていくみたいなポジションを、福岡が自分で創っていくべきなのではないかという気持ちがあった。
- 文化は固有のものだが、相対的なものでもある。相対的なものの中でどこに位置付けられているのかということも大事なのではないか。
- 文化遺産になったからといって安泰ではない。戦略的にビジョンをもって残していく。
- 福岡は他の都市に比べて、好きなことを自分で始めてるというようなことが自然発生的にあちこちで起きているようだ。
- ボトムアップ的に個人や小さな商店、面白い人たちから何か生み出されていくような福岡のマインドセットみたいなものが生まれているように思う。
- 六本松も旧九州大学跡地。古い商店などの町並みが残っている。地主さんの好意で家賃も安く、クリエイターたちが移り住んできている途中。稼ぐことより自分の好きなことをまず始める。そこからユニークなものが生まれてくる。六本松らしさ、福岡らしさが自然発生的に生まれてくる。博多の商業的なバランス感覚は面白い。
- 文化にリーチするために不便であったり点在していても良いのではないか。むしろ、文化と人、場所等を接続するものがあることが大事だと思う。
- 開発途上国は、コネクティビティ、アクセスをとるのが難しいのでひとつの場所に集合させることが最低条件になる。福岡は接続するアクセス、タイミング、人だったりを工夫し接続する媒体、キーパーソンなどが面白いのではないか。そういったものをつなぐ役割としてパブリックスペースや新しい建物が担っていくようになると嬉しい。
- 一度来福した人が、福岡の何に魅力を感じ感動したのか。世界への拡散力が強いと思うので大切に注視していく必要がある。
- 例えばハノイの方。アートを見に来たはずだが、ゴミの件に一番感動された。思いもよらないことがまた来たい、人に伝えたい、ということになるのでそういう視点も学んでいきたい。
- 「九州人」と呼べるような人が増えるといいなと思う。
- 九州は台湾と同じくらいのサイズ。九州という豊かな風土を背景に生きてきた。九州という一つのリージョンを私たちがもっと深く知り、愛す。それは、工芸だけではなく山、森、川かもしれない。それがレジリエンスにも役立つ。例えば災害時などにも。
- 福岡の魅力は多様性。多様性は混沌だということだと思うので定義するのは難しい。
- 山海のなかに街がある。その中でたくさんの人が往来するという都市全体がいいのではないかと思う。
- 計算しすぎない、答えが見えていないことを福岡はやってきた。実験性がなくなるというのは福岡らしくないので多少の冒険やchallengeみたいなものを、市民が応援しなければならないと思う。ちょっとお馬鹿なことも応援していくのが大切なのでは。
パネラーだけではなく会場に集った参加者からも意見や質問の発言が多くあがり、イベント内・ネットワーキングの場ともに活発な議論が行われました。
FDCは来年度も引き続き、国際人材の活躍できる街づくりを目指してハビタットとの連携を進めてまいります。