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2018.06.12

【スタッフインタビュー】Vol.3 稲葉 繁樹 シニアフェロー ×石丸 修平 事務局長 対談

福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局のメンバーを紹介する企画、第三弾は稲葉 繁樹 シニアフェローです。今回は、石丸事務局長との対談形式でご紹介します。
業界・業種の垣根を越えて、多数のプロジェクトを牽引する稲葉シニアフェローと石丸事務局長が考える新たなフェローシステムの構築によるFDC事業化支援体制の強化を図る内容です。


―まずは稲葉さんのプロフィールを教えてください。

稲葉 僕は福岡市で生まれて、福岡のまちが変革していく中で青春時代を過ごしました。ファッションと音楽が好きで、高校に通いながら仕事を始めました。アメリカ西海岸のフリーマーケットでグラム売りの服を買い、東京のセレクトショップに納品。いわゆる仕入れです。
高校を卒業後、父の会社であるティーアンドエスに入りました。担当業務は経営コンサルティング・システム開発・広告制作・新規事業開発と多岐にわたり、これまで20年近くさまざまな会社の新規事業を作り、海外進出やM&Aをサポートしたことも。クライアントはNTT東日本、ソフトバンク、楽天など大手をはじめ、いろいろな業態があります。

―おふたりの出会いは?

石丸 10年くらい前になります。

稲葉 行政の仕事に関わっているときに、福岡で地域政策をやっている人たちから、「キミと真逆の同年代がいるよ」と紹介されて。

石丸 僕は「ぶっ飛んだすごい奴がいる」と聞いていて、お会いしたら本当に言葉の通りでした。

稲葉 当時、石丸さんはPwC(プライスウォーターハウスクーパース)のコンサルタントで、地域のあり方に対して、もっとダイナミックに都市はどうあったらいいか考えるべきだと話していました。元々経産省にいたけど、国にいると地域が遠いから、行政側ではなく民間側でやっていこうとPwCに入ったと知って、この人は面白いと思いました。さらに、地域で新しいことをやろうとFDCの2代目事務局長として声をかけられたとき、彼は自分が責任を持って運営しますと受けて立った。ブレずに思いを貫いていて、すごいと思っています。
石丸さんに会う前、僕は某社の国際事業の仕事をしていてWPPの会長に会いました。WPPはイギリスに本社を置く世界トップの広告代理店。その広告界のトップ・オブ・トップに「日本人はわかってない」「日本人には爆発力と戦術、戦術理解が足りない」と指摘された。こうあるべきということに時間をかけるべきだと。確かにそうだと思いました。そして僕自身は当時、なぜ自分が国際事業をするのか、なぜ日本のものを海外に広めたいのかという考えが浅かったんですよね。アイデンティティを見つめ直したくて東京から福岡に帰ってきたとき、石丸さんに会ったんです。

石丸 グローバルや東京からローカルに、というのは僕らの共通するところ。センスも目指すところも近いけど、お互いに持っているスキルセットやアプローチが全く違って、だからこそ親和性が高いと感じています。

―ふたりの目指すところとは?

石丸 これまで想定されていた社会システムや価値観が制度疲労を起こしていて、統合的にアップデートしなければならないタイミングなんだと思います。誰もが楽しくて気持ちのいい世界にしなきゃいけないと思っています。

稲葉 例えば、世界で国として一番長く続いているのは日本だし、1000年以上続いている会社の半分が日本にある。そんな自国のことも知らずにすぐ流行に乗っかって、サステナビリティとかオープンイノベーションとか言い出すのは違和感がある。企業においては短距離で儲かりたい話と長距離で儲かりたい話をごっちゃにして、サステナビリティという言葉を使うのはおかしいんじゃないかとか。日本の現実を見ながらも理想論があって、いい解決策が必要だなと思っているわけです。
うちの会社のコンセプトは「ハッピースパイラル」、要するに好循環です。企業は儲けてチャレンジして好循環にしておかないと、なかなか続けられない。誰かが無理したり誰かを不幸にして成り立っていたら、いつか破綻してしまう。皆がやりやすいようにどんな枠組みにするかはすごく大事だと、僕はいつも思いながら仕事をしています。

実現したい社会について語るシニアフェロー稲葉



―ふたりともグローバルからローカルに目を向けたのですね。

稲葉 先ほど話したアイデンティティのほかにも、きっかけはいくつかあります。10年前くらいに海外や東京から福岡に帰ってきて、大名あたりを歩いていると、「もう僕のまちじゃない」の連続だった。好きだったもつ鍋屋の場所にはビルが建ち、ラーメン屋も服屋も雑貨屋もないない尽くし。まち自体は発展してオシャレになったかもしれないけど、僕にとっては味がなくなった。東京で生まれたものを福岡でローカライズしていて、福岡のオリジナリティはどこにあるのかと疑問に思った。でも、これは自分たちが挑んだり提案したりしなかった結果だと衝撃を受けたんですよ。真剣に知恵を絞って立ち向かい、福岡発祥の何かを増やすことで福岡オリジナリティを作っていきたいと思っています。

石丸 僕がFDCをやっている最大の理由は、中央集権からの脱却。中央集権ではこれから時代のスピードに到底ついていけなくなると思いますし、必ず全体最適化を目指してしまう。全ての地域からリソースを集めるけど、投資対効果を考えて投下されるから、当然全てを救うことはできない。それって、誰かを犠牲にして誰かが幸せになるという構図にどうしてもなってしまうんですよ。だけど、光が当たらない地域にも人が住んでいて、人生があるわけで、そこをどうやって回していくか考えなければいけない。それをやりたくて、僕は経産省を飛び出したわけです。
福岡は福岡の地域特性を活かし、地域主体でやっていけるのだと証明できれば、大きな1歩になります。行政単位という視点だけではなくて広域連携、官民連携で、「人」を起点にどうしたら地域が良くなり皆が幸せになるかを考えようと。そのためには、地域で事業を作りお金を稼ぎ、製品やサービスが住民のニーズに応え、課題を解決できればいい。そして、他の地域には他のやり方があります。各地域がそれぞれのやり方で自立していく。この価値観は稲葉さんと一緒で、それを彼はビジネスで、僕は公共セクターでやっていると捉えています。

―石丸さんが事務局長に就任して4年目に入りました。これまでの取り組みについて聞かせてください。

石丸 僕が事務局長になったのは、FDCの4年目が終わる転換期でした。FDCはシンクアンドドゥタンクと標榜していたけれど、実際にはほとんどドゥができていなくて、僕のミッションはドゥの部分、事業化のための体制づくりでした。4年間で形を作って成果を出すと宣言して、事務局長に就任しました。この3年で体制を整え、必要な機能を強化して、事業化支援の仕組みはほぼできたと思っています。
僕が事務局長になってから、域外に門戸を開いてきました。今は域外の会員が多く、スタートアップの人たちなどにも関わって頂くようになったのは、これまでの価値観だけでは物事が動いていかないと分かったから。域外には「福岡はなんて素晴らしい環境なんだ。自分が福岡にいたらこんなことをやるのに」という人が山ほどいます。世界中の人たちから見て、福岡は魅力的な場所なんです。だったら、リソースも知恵もビジョンも覚悟もある域外の人たちを巻き込んでやっていこうと思ったわけです。
それは今FDCの強みにもなっていて、会員企業の数が170を超え、域外の企業が半数をゆうに超えている。例えば、FDCは東京の企業も含めワンストップでアクセスでき、連携する海外都市へ紹介することも可能です。これこそがFDCの価値であり、力の源泉だと思っています。これが僕なりの、福岡が自立していくという一つの方法、道筋であり答え。自分たちがバーチャルな経済によって力を持ち、やっていけるわけです。
形はできたので、4年目の今はうまくマネジメントして動かしていく段階。年頭所感で語ったように今年は「結実」の年であり、絶対に成果を出さないといけません。そのために稲葉さんには豊富な事業開発の経験やノウハウを存分に活かして頂きたいと思います。

FDCの思いを語る石丸事務局長



―非常に重要な1年であり、稲葉さんのポジションがカギですね。

稲葉 FDCに限らず、企業にとって2018年は非常に重要な初年度なんですよ。東京オリンピックが開催される2020年に向かって、今あらゆる人や企業や組織がいろんなことを考えている。事業はそもそも3年か5年計画で資産計上するので、何かをするならギリギリの初年度が2018年です。だから、ここ3年ほどは皆がオープンイノベーションと銘打ち、安い金額でいいアイデアを集めていた。けれど、皆、大事なアイデアはオープンな場では言わないから、いいアイデアはたいして集まらなかった。
僕はPOCに力を入れていきたいと考えています。POCはProof of Conceptの略で、新しいアイデアなどが実現できると示すための簡易な試行。プロトタイプの前段階で、Research and ちょっとDevelopmentのようなもの。調査をもとに課題解決できるものをしっかり作ると、日本の企業では2~3年かかってしまうし、書類づくりに追われて熱量が失せて…みたいなことが実際に起きている。そうではなくて、動きで良さを感じられて、意見を出し合ったり事業化の投資判断ができたりするようなプレゼンテーションモデルがPOC。これからFDCの会員企業さんや実証実験に関わっている企業さん、フェローたちとPOCを作り、事業化を実現していきたいと考えています。そして、福岡で頑張っているスタートアップの皆さんの背中も押したい。既存の枠を取り外し、いろんな人をつなげて、新たな取り組みをやっていくつもりです。そのとき、一業種ではなく他業種の多角的な視点と目的の一致が大事だと思っています。

―フェロー体制について、どのように考えていますか。

稲葉 現在フェローにはさまざまなプロフェッショナルがいます。研究肌っぽい人もいれば事業としてやってる人、コンサルのような人もいて、僕はこれから事業化にフォーカスしたフェローを増やしていきたいと考えています。本来フェローは研究員であって、地域で新しいことをやる人がどうすればうまく事業化できるのか研究したい人はいっぱいいるでしょう。フェローが「私はこのテーマでやりたい」「責任を持つからやらせてほしい」という感じになれば、プロジェクトがどんどん生まれて事業性が高まっていくはず。この1年で福岡発祥のアイデアや事業をどんどん生み出すことが僕の目標です。新しいチャレンジをしたい人と企業が、FDCという機能をもとに気持ちよくいろんなチャレンジをできて、その結果として福岡からアイデアが生まれてくればいいなと思っています。

石丸 同時に、事務局としては僕達の次に誰がどんなことをしていくのかというのも課題だと考えています。

稲葉 そう、僕達は地元の先輩方にかわいがってもらって、今がある。だから僕らも後輩たちの面倒をみて当たり前だし、熱い思いで新しいことをやりたいという人がチャレンジできる環境を整えていきたい。

石丸 これまではFDCで企業のハブを作ってきましたが、これからは人材のハブの一端を事務局も担い、事業化をリードしてくれるような人の体制を構築していきたいと考えています。

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シニアフェロー
稲葉 繁樹
福岡市出身。株式会社ティーアンドエス COO 最高執行責任者。デジタルコンテンツ・映像・広告・音楽・イベントなど、ジャンルの垣根を自由に往来する「越境するプロデューサー」として多角的に活躍している。 前衛的なプロジェクトから温故知新なものまで、人々のシーズ(ニーズの種)にリーチする作品を開発し、「考える足」をモットーに日系大手企業たちと新しい挑戦を行う。

石丸事務局長と稲葉シニアアフェロ―

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